予算業務

概要

  • イベント全体の予算関連活動について記載。

  • 予算関連活動は、イベントの予算を作成・調整し、計画通りの収支に着地させるための作業(財務的活動)。

  • 予算・会計タスクは密接に結びついているため、一連の作業として担当(複数人可)することが効率的(ともに予算計画と実際のお金の流れを理解する必要があるため)。

目次

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はじめに

  • 精度高く予算組みを行い、精度高く予算を管理していくことで、 イベントの赤字化を防いだり 、 重要箇所への適切な支出 が可能になります。

    • 予算精度が低いと、本来お金をかけるべきところにどの程度支出可能かがわからず、適切な予算投下ができません。実際は大幅な黒字にも関わらず、イベントの質を自ら落としてしまうことになります。

  • 重要なこと

    • 今後もイベントを健全に継続するためには、単年で黒字にすることが重要。

    • 非営利活動であるため、黒字が最小化されることも重要。

      • 黒字になりそうな分は、参加者・スポンサー・スタッフの負担を減らす方向に消化されることが理想的だが、活動後半で有意義に消化することは難しいため、そもそも過剰な黒字とならない工夫が必要。

    • スタッフに厳格な収支バランスを意識させないような工夫が、活動全体の効率性を大きく上げる

      • 精度の高い予算組み、無駄なコストの排除、支払い対応の重要性の認識は、スタッフ全員に必要

      • 一方で、スタッフ全員が収支バランスを厳密に考慮して活動することは効率が良くない。

  • PyCon JP では、予算の状態を以下の2種類に分けています

    • 仮予算: イベント開催の約6ヶ月前に、大枠の収支情報を集め、一旦の収支バランスをとった状態

      • スタッフ活動が開始されるにあたって、ある項目にいくらまで支出できるか等、随所の支出判断の指針として必要。

      • 仮予算がないと、無計画な支出になり、スタッフ活動の後半でそのしわ寄せが来てしまう。

    • 本予算: スタッフ活動を通じて仮予算の精度を上げ、イベント開催の約3ヶ月前に最終的な予算組みとして確定させた状態

[参考] スケジュールサンプル

  • 8-7ヶ月前: 予算担当決定

  • 7ヶ月前: 仮予算情報収集

  • 6ヶ月前: 仮予算作成

    • スポンサープランの金額・枠数を決める(6ヶ月前頃)際に、予算上の支出情報が必要

  • 6-3ヶ月前: 仮予算の調整・更新

  • 3ヶ月前: 予算確定

  • 3ヶ月前〜当日: 予算変更(審議)・調整

予算シートの見方・使い方

予算追加・変更ルールの策定

  • 仮予算作成と並行して、予算追加・変更のルールを策定する。

    • 仮予算決定と同時に、予算追加・’変更のルールを周知することで、予算管理工数を効率化できるため、予め定義しておくことが重要

  • 詳細は予算追加/変更の申請・承認・対応 を参照

仮予算作成

目的

  • 仮予算作成の目的は以下です。

    • 各収入、支出の内容、金額の妥当性を確認する

    • 収入、支出のバランスをとり、大幅な黒字/赤字がないようにする

      • スタッフ活動には支出を伴うが、仮予算を決めないと、収支バランスが取れた支出かどうかの判断ができない。無計画や勘による支出金額の決定は、活動後半に大きなしわ寄せとなって影響する。

    • 予算に優先度をつけ、必須のものや、余裕があったら執行する予算を確認する

    • 収入、支出のタイミングを確認し、キャッシュフローに問題がないかを確認する

  • 「仮予算」という名称ですが、ここで決めた予算をもとに活動を行うため、ほぼ確定の予算です。予算管理工数を下げるために、ここで作成した予算は大きく変更しないほうがよいです。

    • 支出の追加・変更を頻繁に行うと、収支バランスの管理が難しくなり、予算担当の工数も高くなるため

    • 本当に動かせなくなる予算(=「本予算」)に対して「仮予算」という名称になっています。

進め方

  • 例年チーム組成には時間を要するため、チームの組成を待たずに、現在いるメンバーで仮予算作成を進めたほうがよいです(このあと新規に参加するメンバーが、予算作成に関われるまで情報をキャッチアップするにはさらに時間がかかるためです)。

  • 最初は前年の予算情報をベースにしたものを仮設定して、過去の予算情報を参考にしながら、目立つ部分から手を入れていく形がいいかと思います。作業時期的に、一から作成するには人手も時間も足りません。

  • 仮予算・本予算組みには、スプレッドシート(後述)を利用しています。

予算担当の役割

  • 予算担当は、議論の土台(スプレッドシート等)を準備し、メンバーに働きかけて仮予算情報を集めます。

    • 予算シートは前年のものをベースに作成すると効率的

    • 予算シートの詳細は、予算シート を参照

  • 一人で予算を作成するのは工数的にも時間的にも難しいため、メンバーに働きかけて情報を入力してもらいます。

    • 仮予算の段階ではチーム組成が不十分なことが多いため、チームを超えて全員で予算を作っていけるような働きかけが重要になります。

    • 経験者メンバーは、他のチームに関する予算知見を持っていることもあります。

  • 頻繁に仮予算作成会を開催するとことで、予算情報が集まりやすくなります。

  • 会場費用等、いくつかの大きな金額はこの時点でも確定しています。調べて確定情報として入力します。

    • 一社との取り決めにより、会計事務所費用はイベント会計として計上する必要はありません。

  • 支出情報が揃った段階で、必要な収入金額を算出する。

  • 必要な収入金額情報をもとに、この時点で、スポンサーパッケージの金額 、 来場者人数・チケット金額 をある程度決める必要がある(スポンサー担当・チケット担当)。

    • これは仮予算上の支出をカバーできるように、収入を設計する必要があるため。

    • 早い段階で、スポンサーパッケージ作成担当や、来場者数設計の担当者に依頼をしておく必要があります。

  • 予算情報が集まったら、収支バランスを見ながら個別に調整を図ります。

  • この時点では100-200万円(予定収入の5-10%の範囲)の黒字にしておくのが望ましいです。(スポンサーが想定数集まらない、未特定のコストが後日発覚する等、不確定事項の多くがマイナス方向のものが多いため)。

    • 一方で、この時点で多額の黒字にならないような設計が必要です。

  • 予算情報が集まり、バランス調整が必要な箇所が把握できたら、仮予算決定ミーティング(後述)を行います。

    • 予算担当が内容を理解していない支出項目が無いように、各担当に確認確認します

    • 各金額の根拠も確認します

  • 「多めに積む」ことも必要ですが、「多めに積みすぎない」ことも同等以上に重要です。

    • 多めに積みすぎることで、ボランティア活動のカンファレンスが想定外の黒字を生み出してしまう危険性があります。

仮予算決定ミーティング

  • 記入された仮予算をもとにミーティングを実施し、全体でのすり合わせを行います。

  • 仮予算が決定したら、Aの項目については各担当でタスクをすすめて、予算の範囲内で実施してもらいます。

  • 仮予算なので細部に関しては追加・変更の余地はありますが、大枠でバランスを取っている状態のため、大幅な追加・変更には議論が必要となります。

仮予算精査の観点

  • 確度は適切か

  • 単価や員数は適切か

    • 少なすぎないか。多すぎないか。見積もりを取るなどで金額精度をあげれるものがないか。

  • 足りない項目・余分な項目が無いか

  • 二重に計上されているものはないか

  • 確度S+Aのみの項目で支出と収入のバランスはとれているか

  • キャッシュフローは問題ないか

  • 赤字になっていないか。大幅な黒字になっていないか。

留意事項

PyCon JPでは回数を重ねているため、スポンサー収入を開催前に受け取れたり、支払いを後払いなどにできるようになっているためキャッシュフローには問題はないことが多いです。しかし、初めて開催するイベントなどは外部に対しての信頼がないため、支払いは前払いでスポンサーからの振り込みはイベント開催後となったりします。 そうすると、手元の現金が一時的に赤字になる場合が考えられるので、キャッシュフローの確認は重要です。

予算シートの管理・更新

管理

  • 仮予算作成までは、各担当に予算シートに自由に記入してもらう。

  • 仮予算確定後は、予算に関する変更は、予算担当の承認のうえ実施するようにする

  • 定期的(1-2週に1回程度)に バックアップ用にシートを複製・保護 しておくことをオススメします。

    • スプレッドシートの履歴機能を使用するよりも、確実かつ便利に過去の予算シート内容との比較が可能になる。

調整・更新

  • 具体的なチーム活動が始まる時期のため、各チームに頻繁に働きかけて予算に関する精度の高い追加情報を集める

  • スポンサーの申込状況を参照し、収入の見込みも反映させる

  • 最終的に本予算とするために、全体バランスを考慮し、個別の項目について調整する。

  • 本予算Fixの時期を決め、周知する

予算会議

  • 本予算作成に焦点を当て、チーム代表者を交えて予算会議を行うことが望ましいです。

  • 最新の予算シート(仮予算)の読み合わせがベースになります。

  • 開催頻度は、月に1回程度・本予算作成前は2週間に1回程度が目安です。

  • 収支バランスを確認しながら、チーム間を超えた優先度設定を協議します。

  • 抜け・漏れが無いか、見積精度が低くないかをチーム間を越えてチェックし合います。

  • 各予算項目について、不安から多めに予算計上してしまうと、 本来必要な投下予算が割り当てられず、イベントの質の低下に直結 します。精度の高い見積もり・予算作成を心がけけてください。

  • 収支バランスに問題がある場合に、アクションプランと担当者を決めて解決を図ります。

本予算化(本予算のFix)

  • 開催3ヶ月前までに、仮予算を本予算としてFixします

    • 本予算のFixを行う目的: 計画通りの収支着地を行うため

    • Fix以降は、予算の追加・変更の承認基準をさらに厳格化し、計画通りの収支着地の確度を上げます

  • 本予算Fix会議

    • 最終的に、各予算項目・全体収支バランスをメンバーで確認・合意し、本予算を確定します。

    • 支払いに際しては、 本予算金額 が会計承認の基準になります。

    • 確定した本予算のスプレッドシートは複製して保護します。

  • 本予算Fix後は、予算額を超える支出・予算額を下回る収入変更は特に注意します。

  • 注意

    • 当初確保予算の細分化や配分変更は自由にしてもらうことにします(スプレッドシートの備考欄)

      • 例: 音響機材: 10万円 の予算項目を、スピーカー:5万円; マイク:5万円に分解 (総額は変わらない; 分解することで個別に発注できるようになる)

  • 本予算Fix後の、予算追加・変更の注意点については、予算追加/変更の申請・承認・対応 も参照

予算見直し

目的

  • 予定よりも予算が必要となった項目について、予算として認めるかの確認

  • 新規に予算を付けたい項目についての確度決め

  • 現在の収支バランスでの確度A項目の見直し

  • 今後収入が増えた場合に、どの確度B項目から実施するかの順番の決定

追加予算の確認

  • 実際に見積をとってみたりすると予定よりも金額が必要になる場合があります。

  • また、新規にアイデアなどがでてきて、追加で予算をつけて実施したい場合もあります。

  • そういった項目を追加予算項目として記入し、支出として認めるかどうかを判断します。

必須項目の見直し

  • PyCon JPでは収入のほとんどはスポンサー収入とイベント入場料です。

  • イベント入場料はそのまま参加者の食事、グッズ代などに使用するため、人数が多少増減しても全体の収支バランスには大きな影響は与えません。

  • 逆にスポンサー収入は大きく変動する(支出にはあまり連動しない)ため、スポンサー収入の状況が見えた段階で全体の収支バランスを見直します。

  • 具体的には、収入が予定より多い場合には必須の支出項目を増やし、逆に少ない場合にはもともとは必須としていた項目を削るようなことがあります。

確度Bの順番決定

  • スポンサー収入が増えた場合に支出項目を増やすということを書きましたが、見直し後に急に大口スポンサーが決まり、収入が増える場合があります。

  • その際に都度どの項目を実施するかをミーティングなどで決めていると時間がかかるため、あらかじめ追加項目の優先度を決めておきます。

  • 確度Bの項目の優先度を先に決めておくことにより、XX万円増えたので優先度1から3まで実施、といったことがある程度機械的に判断できるようになります。

  • こうすることにより、追加項目の決定までの時間を短くできます。

確定情報の更新

  • 実際の金額が確定した時、支払いを実行した時、入金が確認できた時には、予算シート状で都度金額やステータスを更新する。

    • 精度の高い情報を更新しておくことで、収支着地の精度が上がり、予算管理工数を低減できる

  • 見積が添付してあるJIRAのチケットなどへのリンクを合わせて記述しておくと把握しやすい。

会計業務に分類されるもの

支払いの申請・承認・実行

  • 各支出の申請・承認・実行は会計作業として行います。

決算・イベント収支報告

  • イベントの終了後にイベント単体での決算を行います。

    • 決算作業・収支報告は、会計作業として行います。